「エンディングドレス」 |
2018年8月15日
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蛭田亜紗子さんの「エンディングドレス」は
この時期に読むのにふさわしいお話でした。
最愛の人をなくした主人公の麻緒は
絶望感の中で自殺する準備を進めています。
ひょんなことから死に装束を作る
終末(決して週末ではない)洋裁教室に
通い陽気な3人のおばあさんトリオの
おリュウさん千代子さんしのぶさんと
一緒にエンディングドレスを
縫うための課題に取り組みます。
戦時中にはたちを迎えた千代子さんは
「娘ざかりのいちばん輝いていたころ、
わたしは着飾ることがいっさいできなかった。
せめて死に装束はとびっきりお洒落をしたいと思って(略)」
千代子さんの思い出が
せつなくて大泣きしました。
戦争中に青春時代を過ごした多くの女性が
経験されていることと思われます。
千代子さんの母親が浴衣だけはと
とってあったというその親心にも大いに泣きました。
『自分以外のだれかのための服を
つくってください』の章でも
千代子さんの優しさにキュンと泣かされました。
おリュウさんが最期の装いに選んだのは
真っ赤なビーズ使いのドレスで
それは、おリュウさんの好きな花に
囲まれた時にとてもひきたつ衣装でした。
主人公の変化していく様がとても手ごたえがあって
「服を一着完成させるごとに、
わたしはばらばらになった自分のパーツを
縫い合わせるように立ち直っていた」
というセリフが心に残りました。
主人公が人と接し交流することで
少しずつ再生していきます。
読後は爽やか気分になれました!
平和を意識することが多い
この時期にちょうどこの小説に
出会えたことに感慨深い思いでいます。
終戦記念日の今日、二度と戦争が
起こりませんようにと強く祈ります。
女性が自由に装うことができる
今の時代はとても幸せだと感謝します。
そして、ハレの日に花嫁様の
お手伝いができることは誇らしく
さらに丁寧に大切にと心から思いました。
投稿者 rin5chan : 2018年8月15日 カテゴリー: 気まま図書館 | コメントはまだありません »
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