「風葬」 |
2017年9月22日
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桜木紫乃さんの暗く重たい世界と
情景描写の美しさに今回も引き込まれました。
「風葬」は北海道の涙香岬(るいかみさき)が
物語のキーワードになります。
北海道の海岸線町では、
拿捕・密漁・密輸・マフィア・
二百浬領土問題・抑留・裏社会・
諜報活動と昭和の米ソ冷戦の頃は
そんなおどろおどろしいことを
身近に感じていたのかしら・・・・・。
物語は幾組もの親子が交差します。
出生の秘密を明らかにしようとする
女性と、認知症の母。
ソ連船に拿捕され殺された父親と女子生徒。
その時、担任だった父親とともに
事件を解き明かそうとする息子。
その息子が担任の時に子供を
失ったと訴訟をおこす父親。
学校側の弁護をする弁護士の父親と娘。
根室の古い旅館の裏社会に暗躍する女将と
ソ連に情報を流す息子。
親子達が他の親子達と繋がってゆき
ミステリアスな物語はさらにさらに
幾重にも絡まってゆきます。
そして、自殺・北海道に逃げて来た男女、
生まれるはずではなかった子ども、
ネグレクトといったことが陰湿にからんできます。
遊郭がありかって栄えたことを
うかがい知れる町はひっそりとさびれ
丁寧な描写に漁師町の生臭さや
鉛色の空、湿度までも感じ物悲しさが募ります。
終盤は絡みついていたモワっとした霧が
徐々に晴れていくような清々しさがありました。
投稿者 rin5chan : 2017年9月22日 カテゴリー: 気まま図書館 | コメントはまだありません »
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