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「起終点駅(ターミナル)」 
2017年7月30日

この週末、あちこちのひまわり畑でイベントが
開催されているそうです。
きっと、きれいでしょうね。



鱗雲が浮かぶ少し茜がかった空に背の高いひまわりは
昨日、金澤syugenそばで撮りました。


桜木紫乃さんの「起終点駅(ターミナル)」を読みました。
六編の短編はそれぞれ桜木さんならではの
人間臭さを感じるおもしろさがありました。



中でも「たたかいにやぶれて咲けよ」が好きです。
20代の新聞記者が、歌人で生涯独身だった
中田ミツに取材するため老人ホームを訪れます。
ミツが矍鑠としていてやたらカッコいいのです。

「やりたいようにやってきた
生きたいように生きたいように生きてきたくせに、
終わりだけ人まかせなんて、恰好悪いじゃないの」


と話します。


ミツが82歳で亡くなり、記者がミツの姪のもとに取材に行くと

「ミツさんは、長いことわたしの父と関係があったんです」
「母は気づかないふりの上手い女で、
父はその母に輪をかけて気づかれていないふりの上手い男だった」
「誰も不幸じゃなかった。母も父も、ミツさんも(略)」
「ひとがそれぞれの想いを守り合うと、もめごとなんか起きないの」


男女の愛情には“恋愛”とはまた違う
関係があるのかもしれないと感じました。


ミツが作った短歌

「たたかいにやぶれて咲けよひまわりの種をやどしてをんなを歩く」
「恋愛を「たたかい」と詠み、敗れても咲けと己を叱咤する。」

と、いうことだそうです。


姪はミツの店でバッタリ父親に出会ったことがありました。

「いいわけをしない男の人を、あのとき初めてみました」

うろたえない男は桜木紫乃さんの理想なのでしょうね。
桜木さんの小説にはいつも寡黙で
渋い男性が描かれています。


晩年、施設に入る前のミツは、
売れない小説家の47歳年下の男性と同居します。

「あなた、召使いよ」

と二人であちこち旅をします。

「ひまわりの畑の中を歩いてみたい」

ひまわりの里では、
一面のひまわりの中で

「ソフィア・ローレンになった気分」

と、ミツがはしゃぎます。
これが二人の最後の旅になります。


82歳の老女は濃い赤の口紅の似合う
凛とした女性でした。


「起終点駅」は、北海道の情景の描写が美しく
桜木紫乃さんならではのからみつくような
湿度の高さを感じる物語達でした。


追記
ソフィア・ローレンの「ひまわり」は
ずっと昔に観たことがありますが
今、観たらもっと感動するんだろうなという気がします。

投稿者 rin5chan : 2017年7月30日 カテゴリー: 気まま図書館 | コメントはまだありません »

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