「美しい距離」 |
2016年10月19日
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山崎ナオコーラさん「美しい距離」
読了から数日が過ぎて、なお
あたたかい余韻に浸っています。
末期癌の妻に寄り添う夫が主人公です。
決して哀しい話ではなくって
読んだ後は、清々しいキブンになれる
優しさにみちたお話でした。
私は両親との別れの経験があります。
小説の中で
配偶者と親は違う。
というくだりがありました。
もちろん、もちろんだと思います。
夫は休職したいと悩みます。
別の世界を抱えてこそ、妻に寄り添えるのではないか。
妻を介護している夫が仕事との両立をする中で
様々な選択をしてゆきます。
妻の身の回りを世話する夫が
こんな日がずっと続けばいいのに、とつい願ってしまう。
このまま病院で看病をしながら、
永遠の時間を過せたら良いのに。
こんな穏やかな気持ちになれるものかと、
涙が溢れました。
小説の中で「台詞」を「科白」という
文字を使っていらっしゃいます。
医者側が用意している物語に合わせて
過していきたいと思ってはいない。
患者側には患者側の物語がある。
この感じも、言葉は違うけれど
胸に持ったことあります。
この人は配偶者を看取ったことがあるのだろうか
仕事と介護の両立に悩んだことがあるのだろうか。
本当に日常の描写がごくごく自然で細やかなのです。
読みながら、『え?いくつだっけ?』と
作者の年齢確認を何度もしました。
30代の女性でいらっしゃいます。
そんなことを言ったら
男性になったことはあるのかって話ですね^^;。
それができるから作家さんなんです、きっと。
例えば「見舞ってくれるかたに持つ感情」
それも「わかるわかる」なのです。
当時、そういうことを考える自分がイヤで
考えないでおこうとしても記憶から離れないという
囚われに悩まされたことがありました。
「美しい距離」を読み進み、その物語に
紡がれている言葉達がしっくり胸に
落ちてゆくのを感じます。
関係が遠くなるのも乙なものだ。
そう言えば、両親の御墓の前に行くと
自然に丁寧語で語りかけています。
生前、丁寧語で話したことなどないのにです。
関係が遠くなり神になったとどこかで思っているのでしょうね。
後半はティッシュの箱(保湿成分配合の)を
かかえてほぼ泣きながら読みました。
夫が介護する中で「妻が仕事に対して持つ
思いや生きがい」をあらためて積極的に理解しようとし
大切に思いやる姿にも感動しました。
読み終えて、自分が棺に入れて欲しい物って
何だろうと、考えました。
私の人生の集大成とも言える金澤syugenの
ホームページのHappy Reportのページを
カラーコピーしたの入れて欲しいな。
どの結婚式にも特別な思いがあります。
幸せな新郎新婦様とそのご家族との思い出は私の宝です。
読んだ本を「これ、きっと好きだろうな」ってかたに
オススメするのが好きなのですが
今回は読後、素敵なご夫妻達のお顔が
次々に浮かんできました。
脚本風に描かれていて文字数が少ないので
お忙しい方もサクサク読めると思います。
結婚したばかりのご夫妻にも
長い年月を過されたご夫妻にも
オススメしたい一冊です。
投稿者 rin5chan : 2016年10月19日 カテゴリー: 気まま図書館 | コメントはまだありません »
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