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「ふたりぐらし」
2018年11月6日

桜木紫乃さんの新刊
「ふたりぐらし」は
夫と妻が交互に一人称となる
「ふたりで生きていくこと」を
テーマにした連作短編でした。



出会ったときからこの声が好きだった

と、妻が思う、その感じわかります^^。
声に、言葉や表情以上に
その人となりを感じます。


桜木さんの作品につき
闇世界や危なく艶っぽい男性が
登場する暗黒小説を期待して
おったのですがつまつまとした
毎日の暮らしの心の内が
丁寧に繊細に描かれています。
なんならそこにあるであろう
生活臭まで想像できました。


ヒモのような夫が
母親が亡くなって一年して
鳩サブレの缶に500円貯金と
遺されたメモを見つけます。

素っ気ない演技に騙されていたのか

親の心、子知らずに泣かされました。


夫の上司の男性が付き合っている
女性の母親を病室で看取る時に
整髪料のにおいを感じるシーンがあります。

「この匂いはお父さんのものだ」

と女性が言うのです。
のちに男性が語ります。

お迎えっていうのは、
逝く側が心から
望んだ人が来るのかもしれない

このくだりがとても、とても好きでした。


来し方行く先を考える世代も
これから結婚を考える世代にも
良き一冊と思います。


本の帯に「一日一章ずつ」とあったけれど
こらえきれず一気読みしてしまいました。

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「廓のおんな 金沢名妓一代記」
2018年10月23日

ずっと読みたかった井上雪さんの
「廓のおんな  金沢名妓一代記」を読みました。



時代小説が好きで吉原や京都の
花街のお話には多く出会い
岩下尚史さんの随筆でも
新橋や深川、赤坂などなど
地域によって芸者さんの
営業の形態が違い
時代によっても役割が変わった
ことなども知り金沢の遊郭に
ついて書かれたものを探していました。


きぬさんも本が好きだったそうです。
「芸者は新聞や本を読んだら
恐ろしい人間になる。旦那さんが
つかなくなる」と禁じられ
読み書きを覚えることも嫌がられたため
泉鏡花を隠れて読んでいたと言うのです。
知恵がつくことを女将は嫌ったようです。


13歳の時にロシアの俘虜に
「オジョサン」と生涯に一度だけ
呼ばれてお嬢さんは良家の
子女をさす言葉だったから
胸が高鳴ったと言うのです。
そして、17歳で初めて横山邸で
お雛さんというものを見たと
書かれていてせつなくなりました。


明治から昭和までの世相
時代の移り変わりが描かれています。
金沢の町にロシア人の俘虜が
大勢いて(天徳院に300人も入れるんだ!)
随分と大切にされたようです。
金沢駅から出発する汽車を野町まで
見送りの人が連なっていたというのを
頭の中で想像しました。
元旦は日本髪を結い毘沙門さん
(宇多須神社さん)に黒留でお参り、
続いて挨拶まわりをしたそうです。
兼六園に屋形船が浮かび
霞ケ池を一周したなどなど
そんな時代があったんだと
セピア色の風景を思い浮かべながら
読み進めました。


母の世代というより祖母が使っていた
金沢弁の話し言葉で語られていて
それは、今の濁音が多い金沢弁ではなく
まあるい響きのある言葉で
今はまず聞くことのなくなった
「はしかい(賢い)」
「はごたえ(口ごたえ)」
などなど懐かしい方言に
タイムスリップした気分でした。


その昔の金沢の風習や暮らしなども
うかがい知れてオススメです。

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「彼女の恐喝」
2018年10月15日

藤田宜永さんの「彼女の恐喝」は
昭和のドラマを観るような
どこか懐かしい感じがしました。



主人公の女子大生の矛盾している性質
「悪女だけど優しい」「狡猾だけど健気」
これは、作家さんの若い女性への
願望なのかしらんと想像しました。


主人公も含めて登場人物達が
暗黒の中にいながらも人としての情を
持ち続けていると感じられて心地よく読めました。


未読のページがもうわずかしかない頃には
いったいどう決着するのだろう
って、ハラハラ急いで読み進みました。


あまり、読まないラブノワールサスペンスですが
ドキドキおもしろかったです。

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「静かに、ねぇ、静かに」
2018年10月9日

石川出身の作家の本谷有希子さんの
新作「静かに、ねぇ、静かに」は
ネット社会を描くホラー三作品でした。



一作目の「本当の旅」は
SNSで誰しもが持ったことのある
違和感が気持ちいいくらいに
あぶりだされています。


自分を探し続けたままアラフォーに
なった三人は一緒にいながら
SNSで会話をしたり、
加工、編集してインスタ映えする
写真を楽しい思い出として
SNSにのせ「作りものの旅」をします。


例えば「こんなもの日本じゃお金は払えない」と
感じている料理を懸命に写真を撮り
スマホの画面をのぞきこみ「おいしそう」
と、満足し冷えた料理を食べる
そんな三人は不気味です。

僕が本当はどう感じたかなんて、
たいしたことではないのだ。


画面の中の自分たちが
楽しそうで仲よさそうで
食べ物がおいしそうなことに
充足感を得るようになったというのです。


無神経でまわりへの迷惑おかまいなし
それでいてお気遣いな自分に酔っている感じや
ハラハラするようなポジティブ信仰
(思考ではなく)っぷりも違和感あります。
おもしろくってあっという間に読みおえました。




ネットショピング依存症の二作目
「奥さん、犬は大丈夫だよね?」
動画配信をする三作目
「でぶのハッピーバースデー」は
芥川賞の「異類婚姻譚」を
読んだ時のあの感じで
私にはうまく理解できませんでした。

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「彼女は頭が悪いから」
2018年10月1日

「彼女は頭が悪いから」の
第一章は平凡な女子高生の日常が
事細かにかかれていて退屈で読むのを
やめようかと何度も閉じかけました。



ウィット、言葉をかえたら
イヤミな表現で度々、東大生を表現し
東大生の差別的蔑視の感情の
詳細が描かれていますから
とにかく嫌な気分になって
がまんして読み進むうちに
どんどんさらに嫌な気分で
いっぱいになって
不愉快きわまりなく
途中でやめて寝るってことができない
と、夜更かしして一気読みでした。


恋の終わりはせつなくて
一縷の望みを信じたい
被害女性の気持ちもわかるわかるです。


被害女性を残して帰って行った
知人女性の行動は理解できず
私だったら無理矢理でも
「さ、一緒に帰ろっ」とひっぱって
部屋から連れ出すんだけど・・・
って思いました。


物語の終わり被害者女性の通う
大学の教授の言葉にボロボロ泣けて
不快感いっぱいで読んできた
心が救われました。


人の痛みや苦しみを共感する能力は
東大を合格するには無駄で
不要なのだといったことが
かかれていたけどそんな人ばかりではないです。


姫野カオルコさんの作品
他も読んでみたいと思いました( •ॢ◡-ॢ)-♡。

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「正しい女たち 」
2018年9月26日

千早茜さんの短編集
「正しい女たち」を読みました。



この中で、半年後の春に幸福な
離婚を約束している夫婦が
心穏やかに残り少ない日々を
過ごすお話がおもしろかったです。


一緒のベッドで寝て互いを慈しみながら
日々を暮らす二人はおだやかな夫婦です。
それでいながら「離婚は結婚の死」と
もうすぐ死にゆくときの冷たい気配が漂っています。


これで終わりだと思えば、
相手への憎しみや怒りも和らぎ
優しくなれるものなのかもしれません。


諦めたことでかえって
残されたの二人の時を大切にしようと
終わりに向けてゆっくり思い出を
静かに作っていくの感じが切ないけど良かったです。

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「大人は泣かないと思っていた」
2018年9月20日

初読み作家の寺地はるなさんの
「大人は泣かないと思っていた」は
文体のバランスも良く読みやすかったです。



噂話が娯楽というような
田舎町での男尊女卑のエピソードが
リアルに描かれています。


主人公が変わる連作短編が
繋がってゆきます。
到底共感できない無神経で
横暴かつ身勝手なおやっさんの章もありました。
ですが、おやっさんの孤独、悲哀もあり
この章が一番おもしろかったです。
ラストに長年連れ添い我慢し続けた
奥さんがああたに言いたいことが
たくさんあるから伝え終わるまでは
長生きしてという
それがなんとも優しさに満ちていて
ふわっとあたたかい気持ちになりました。


それぞれの章の目線が変わり
女ゆえの窮屈さがあり
男ゆえの苦悩ってのもあって
また、年代別の悩みってのが
あるんものなのだということを感じました。

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「燃える波」
2018年9月17日

村山由佳さんの新刊「燃える波」を読みました。



子供っぽく自分勝手なモワハラ夫との
間でのトラブルの起こりかたや
進展のしかたとかが
とにかくリアルでこういう
経験あったんだろうなって
ここまで心の機微の詳細をえがけるは
想像だけでは無理だろうななんて考えたりしました。


主人公の仕事が順調で
その成功のしかたがはんぱないのです。
そして、さらには主人公を
ずっと昔から慕ってくれていた
同級生の男性との出逢いがあって
ほめてくれるし感性が似ているし
恋も仕事も順調ってドリーム感いっぱいです。


さて、先日のNHK「ネコメンタリー
猫も、杓子も。村山由佳ともみじ」は
関西弁で話す猫(上野樹里さんの
ナレーション)のもみじちゃんが
最高にキュートでした!


そのドキュメンタリーで村山さんの
二回目の離婚のあと同居する
同級生の男性が実在するのを知りました。
あぁ、小説はほぼほぼ自叙伝でしたか。
なんて無粋なことを考えてはいけませんね。
小説、おもしろかったです☆”

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「ほんのきもち」
2018年9月10日

「ほんのきもち」は、16人の
作家さんが贈り物について書いた
幸せな気持ちになれるエッセイ集です。



初読みの鹿子裕文さんの
「とっておきの一冊」は
リズムも心地良く
きっと相性いいなっと読み進んだところ
とどいた贈り物のところで泣けました。
で、お返しにおくったお品に
また、泣けました。
なんともあたたかい気持ちになれます。


やはり、初読みの乾ルカさんの
「天使の名前の犬のこと」では
顔が水浸し大事件になりました。
愛犬ガブリエルとの思い出話は
どれもこれも微笑ましく
亡くなった愛犬へ感謝の想いを
「いまだかって味わったことが
ないほどの悲しみをくれた」
と、それが贈り物だったと綴られていました。
8ページ(内1ページは下の絵)のお話はすごい威力です。



挿絵のセンスも良いのです。


贈り物に困った時にきっと
心強いなっていうバイブルのような本でした。

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「ありえないほどうるさいオルゴール店」
2018年9月1日

今日から九月、涼しいです。
丘の芝生がお盆ごろはワラの色をしていて
夏の芝生ってこんな色だったっけ
と、不思議に感じていました。
ですが、ここんとこの雨で
みずみずしい青が甦り誇らしげに輝いています。

 

瀧羽麻子さんの七つのお話
「ありえないほどうるさいオルゴール店」は
タイトルとは裏腹に静かな店内でおこる
優しい物語達に泣けました。



それぞれのお話は独立していて
各結末に心ほのぼのとする展開があります。
ファンタジー系好きさんにも
ヒューマニズム系好きさんにも
お子様にもご年配にも
とてもオススメの一冊です。

人生の大事な場面でたまたま流れていた曲が、
心に残ることもある。
音楽は大切な思い出を呼び起こす。
 

自分にはどんな曲のオルゴールなのだろう
心の音をカタチにしてくれる
こんなお店があったらいいなぁ♫•*¨*•.¸¸♪✧

 

余韻も楽しめます。
フェィバリット図書が増えました。

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