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「吹上奇譚第2話」
2019年2月18日

吉本ばななさんの「吹上奇譚第2話」は
前作に続いての哲学ホラーとのことですが
人情味もあってファンタジー色強く
屍や墓場と死の匂いがするのに
どこか牧歌的で爽やかです。



美鈴という少女が話すと

言葉がこんぺいとうくらいの小さな字が
ぽろぽろと口から出ては、雪みたいに消えてゆく

楽しいじゃありませんか(o^∇^o)ノ
ばななワールド炸裂です。


少女の霊に取り憑かれた美鈴
(黒美鈴とよぶのですが)のくだりでは
霊も霊に体をのっとられたほうも
互いを思いやる感じが優しくてホロリときました。


あとがきで、今回の作品の執筆の時期は
「青春を象徴した人たちとの別れ」が
多くあったそうです。
大切な人達や愛犬、
おばあちゃん猫ちゃんと続く
悲しいお別れがあり
30年の戦友だったという、さくらももこさんとの
ことにもふれていました。


吹上奇譚第1話に続いて
深いテーマを扱っているのに
あったかくほのぼのするお話でした。

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「あなたの愛人の名前は」
2019年2月12日

島本理生さんの「あなたの愛人の名前は」は
ドキドキあっという間に読めます。



恋愛とは言えないような危なっかしくも
引き寄せあう男女の関係が
人称の異なる短編で収められていて
お話達が繋がっているのです。
一個だけ猫目線の章がありましたっけ。


「氷の夜に」が純文学のような文体で
「あなたは知らない」と「俺だけが知らない」が
女性側からと男性側から一対の作品でした。


道ならぬ恋、幸福感をえたいと
埋められないものを補う感じの男と女。
が、島本理生さんの繊細な感情の表現で
描かれると湿度持ちつつの清涼感がありました。

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「それでも空は青い」
2019年2月8日

荻原浩さんの「それでも空は青い」は
ファンタジー、ヒューマン、ホラーものまで
コミカルに描かれてる短編集です。



帯には「人間関係に正解なんてない。
人づきあいに悩む背中をそっと
押してくれる7つの物語」とあります。
確かにそれぞれの家族の不器用な感じは
ほっこりあたたかくてホロっときました。


「人生はパイナップル」が特に好きで
戦争体験のある祖父の思い出と
孫の現代の思いが交互に語られます。
孫の誕生日が終戦記念日であることも
きっと、意味があるんですね。


「どんなに悲しくても辛くても
空って青いんだよな。」
誰もが、辛い時、空を仰いで
こう感じたことあるのではないでしょうか。
ハートウォーミングなお話達でした。

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「光まで5分」
2019年2月5日

桜木紫乃さんの「光まで5分」は
沖縄を舞台にしたノワール小説です。



いつも暗黒なんだけど、
悪い奴はいたっていいんだけど、
金と暴力と性の
記憶から自由になれない
流されていくだけの主人公の生き方に
読後感はどんよりとなりました。


今回は救いも癒しもまるでなく
桜木ワールドのファンとしては
すっきりしない終わり方でした。

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「髪結百花」
2019年1月29日

泉ゆたかさんの「髪結百花」は
吉原を舞台にした髪結さんのお仕事
時代小説でした。



各章で髪を結いあげてゆく
描写にワクワクしました。
表紙は灯ろう鬢です。
花魁の艶めかしさ
着物やかんざしの華やかさを
想像するとさらに奥行きが広がるようです。


四章では、懐妊の時から
「この子が生きてくれるなら」
と、我が子のために死ぬことは
「そんな嬉しい死に方」何も怖くないと
言い切る潔い花魁の姿に感動しました。


遊郭での花魁の悲惨な境遇に
寄り添う髪結いさんの女性としての
人生もまた悲しいものです。
けれど、最終章では
登場人物すべてが好きになれました。


読み終えてこんな風に命がけで
産んでもらったんだなぁ
母親に感謝しなければって思いました。

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「愉楽にて」
2019年1月25日

図書館で順番待ちの長かった
林真理子さんの「愉楽にて」が読めました。



二人の富裕層の男性が主役で
東京、京都、シンガポールを舞台に
現代の源氏物語のごとく
優雅で甘美なことでした。


登場人物が「あ、あのIT社長のこと」や
「きっと、あの会社ね」ってうかがい知れて
林真理子さんが実際に見聞きしていることを
元に構築しているんだろうと感じました。
そして、女性を値踏みするごとくな
お化粧や服装、雰囲気なんかの描写がさすがでした。


いくつになっても甲斐性があれば
恋ができるというメッセージを受け取った思いです。

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「本日は、お日柄もよく」
2019年1月21日

機を逸して読めていなかった
原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」
この度、ご縁あって読みました。



お話に登場するスピーチを読む度
言葉や文章の美しさ
力強さに心を揺り動かされました。
言葉の魔力って、なるほどです。


言葉の持つ力に魅せられた主人公が

なんていい日なんだろう、今日は。
大好きな人たちが、こうして、
集まってくれた。
私たちの、新しい門出のために。

結婚式の日のこの言葉に
今までの金澤syugenの
いくつもの感動のシーンが甦り
卒業新郎新婦様達の最高の笑顔が
思い出され、あたたかぁ~い
気持ちで読み終えました。


美しい日本語を次の時代へと
繋いでゆけたらとも感じました。
初めての古本屋さんにてのお買い物は
満足まんぞくでした。

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「リトルガールズ 」
2019年1月15日

錦見映理子さんの「リトルガールズ」に
ある思春期の頃、美しい女子友に憧れる
感じは女子の誰もが通る道な気がします。



登場人物の人間関係も複雑
それぞれの思いも複雑です。
夫が妻をすごく愛している
その表現が不思議だったりもしました。
太宰治賞とのことです。


錦見映理子さんの経歴を読んで
「校閲」さんと知り、なるほどでした。
子どもから大人までいろいろな
登場人物の目線で
めまぐるしく語り手が変わるのだけど
とても厳密に描かれていて
スラスラっと読めました。
あ、表紙の裸婦画は50代の女性です。


年末年始と案外と忙しく
なかなか一気読みは難しかったのですが
久々にイッキしました。

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「猫のお告げは樹の下で」
2019年1月11日

青山美智子さんの「猫のお告げは樹の下で」は
七つの短編からなる人情味いっぱいのファンタジー小説でした。



悩みを持つ各章の主人公が猫のミクジから
お告げをうけとります。
お告げで見えるようになるわけじゃなく
見ようとしていなかったことに
気づけるという感じなのです。

 

猫の描写も愛情あふれていて
神社に現れるハチワレ猫の様子を
想像することも猫好きにはたまらないことでした。

 

一番泣けたのは
思春期の娘を持つ父親の章でした。
我が子とコミュニュケーションが
うまくできないことに寂しさを感じ悩む父親が

家族って、電車に乗り合わせたようなもんだ。

そして

時期がきたら自然に、自分の意志で親と違う電車に乗り継いだ。


と、我が身の成長の時期を思います。

 

私は娘を持った経験も
父親になった経験もないけれど
どしちゃったんだろうってくらいに泣けました。

 

七つのお話は、おしまいで
主人公の気づきと前向きに歩む姿に
ホッコリあたたまれます。

好きな言葉があって

「神の見えざる手で必要な人のところに渡るようにできてるものよね」

「えにし」ということに思いをめぐらせ
まわりにいる人にあらためて「感謝の思い」を
言葉にしたくなりました。

 

「猫」がタイトルに入っていたから
借りたのですがハートウォーミングで
幸せになれるオススメ本です!

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「フランス座」
2019年1月7日

ビートたけしさんの「フランス座」は
装丁が洋菓子のパッケージ
(昔の資生堂パーラーの箱っぽい)
のようにきれいです(*^▽^*)



お父さんの話はテレビで何度も
聞いたことあるエピソードでしたが
それでも笑いました。


子供が大学に行っておらず
ストリップ劇場でバイトしていることを
知りながらもお母さんが、ずっと
私立大学の学費を払い続けていたり
こっそり大家さんに家賃をおさめていたり
さらに小遣を渡すくだりでは
ホロリと涙が出ました。
母親の愛情の深さには胸うたれますね。。。


「師匠に出会って、俺は一生の夢を拾った」
下積時代の自伝的私小説は
昭和ならではの粋も感じました。

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