「傲慢と善良」 | 2019年4月8日 |
辻村深月さんの「傲慢と善良」は
ミステリーと思いながら読み進むと
婚活、恋愛、SNS、ヒエラルキーと
言ったイマドキな闇が描かれていて
後半、俄然おもしろくなりました。
傲慢さと善良さというのは正反対の
ことのようで実は紙一重なのですね。
一つのシーンを男性側からと
女性側から書かれていて
そこには嫉妬や親子の歪んだ関係、
マウンティング、タナの違う人間同士の
折合わせない感じなどなど
複雑に絡み合っていました。
夜中に目が覚めて、先が気になって
いたものだからついつい手にとって
と、414ページあったけどすんなり読めました。
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「ショートショートドロップス」 | 2019年4月2日 |
新井素子さん編集の
「ショートショートドロップス」は
女性作家によるアンソロジーです。
宮部みゆき「チヨ子 」が最高に好きでした。
宮部さんのファンタジー系は
「過ぎ去りし王国の城」が印象に
残っていますがこのショート小説にも
現代社会の問題や辛さが描かれていました。
何かを大切にした思い出。
何かを大好きになった思い出。
人は、それに守られて生きるのだ。
なんか、なんかわかります。
三浦しをんさんの「冬の一等星」も大人と子供の
友情が守られた感が良かったです。
淡い恋心と桜咲く公園と鯛焼き
辻村深月さんの「さくら日和」も
せつなくて可愛くて好きでした。
SFやサスペンス、ホラーも
ドロップのごとくな文章で楽しく読めました。
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「麦本三歩の好きなもの」 | 2019年3月29日 |
住野よるさんの「麦本三歩の好きなもの」は
「図書館勤務の麦本三歩のなにげない日常」と
紹介文通りおっちょこちょいな女の子の
穏やかでゆるーい日々のほのぼの系
だと最初は思いました。
けど、読み進むうちに「けっこう深い!」
と、感じるとこがいくつもありました。
三歩の好きなものが章ごとに
テーマになっていて
「麦本三歩は君が好き」では泣けます、かなり。
「(略)君を好きなままの私が、少なくともいるから、安心して、(略)」
この前後の言葉をかくとネタばれになるので
かけないのだけどとにかく感動しました。
三歩の友人を思う優しさは、なんてあたたかく
そして人を勇気づけられる強さがあるのでしょう。
三歩の成長してゆく様も好きでした。
まったりされたいかたにオススメの一冊です。
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「愛なき世界」 | 2019年3月26日 |
三浦しをんさんの「愛なき世界」は
料理人と研究者、登場する人々が
みな優しく愛にあふれています。
ビストロの大将は厳しいけれどいい人で
お芋を育てる教授の芋愛は微笑ましく
殺し屋風の松田教授の友情の話には
うるっときました。
苺のツブツブは種ではなく果実で
果実と思っていた香り良い赤い部分は
めしべの土台の茎のようなものだそうです。
そして、苺は野菜なんですって。
泉野には家庭菜園をされているお家が多くて
私は徒歩か自転車での通勤なので
草花から季節の訪れを知ることがあります。
特に野菜の花や実が好きで
苺の白い花を見つけた時は
なんと愛らしいことかと健気に育つ姿に感動しました。
「地球上の生物はみんな、光を食べて生きてる」
これいい言葉です、うつむかず前向きに
と、植物を通して愛について考えるお話でした。
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「ラヴレターズ」 | 2019年3月21日 |
「ラヴレターズ」は直木賞作家や
「え?あの二階堂ふみ?」のような
タレントさんの章もあるアンソロジーです。
壇密さんの恋文はダメダメな男性に
振り回されていた若き日が綴られていて
少し似たような経験がなくもないもので
懐かしい気持ちになりました。
あと、テレビでよく毒吐くコメンテーターが
案外と可愛らしい女性なんだなぁ
って思えたりもありました。
吉本ばななさんの恋文は好きでした。
さぁて、私が誰か一人にラヴレターを
かいてとどけられるとしたら・・・
5年前にお空に行った猫のモコちゃんに
とどけたいです。
今もモコを思い出さない日はありません。
ウチの坊主はモコと話す時には
お兄ちゃん風を吹かせていましたっけ。
モコにラヴレターをかきました。
良かったらお読みくださませ。
「お空のモコへ」
人間の勝手で捨てられたのに
人懐っこくってすぐにお兄ちゃんと仲良しになったね。
手のひらにのるくらい小さくて
初めての猫だったから風邪をひかせないようにと
母さんは膝掛けを腰に二重に巻いて
おヘソのあたりにモコを入れて仕事していたよ。
カンガルーの親子みたいだったね、きっと。
気持ち良く眠って目がさめると
小さな体ですばしっこくやんちゃもしたね。
可愛い顔してモコには狩猟本能があったよね。
母さんが歩いていると頭を低くして構えてて
狙っていることが目のはしに見えていても
気付かないふりをしてあげたよ。
腰を左右にふったあとピュッと走って来て
ベビーシュークリームみたいな小さな手で
母さんの片方のかかとを
チョンとつまんでシャッと逃げて行ったね。
母さんは「わぁ!」という驚くフリを忘れなかったよ。
そんな時「してやったり」と得意な顔していたね。
お兄ちゃんが夜遅くまで起きていた日は
嬉しくて嬉しくてナナメナナメに飛び上がる
ヘンテコな動き方したよね。
欽ちゃん走りのようだったよ。
一緒に寝ようと抱っこしてもしばらくすると
もういいよね?とばかりに猫らしい体制を
整える仕草のあと部屋から出てゆくんだよね。
それでいて明け方になると、
なんで一人にした・・・
と、メソメソ小さく啼きながら
部屋にやってきたね、毎日。
そんな時、可愛くってしかたなかったよ。
モコは母さんの感性をつちかってくれたと思っているよ。
ありがとう、本当にありがとう。
今も、自転車こいでいる時や歩いている時は
モコの可愛かったこと、
おかしかったことの思い出を取り出して
ニヤニヤ笑ったり
目に水の膜がはってきたりで
「いかんいかん」とこらえたりも度々。
怪しいヤツかもね^^。
モコ、ずっとずっと大好きだよ
いつかきっとまた会えるよね。
そしたら、抱っこしてモコのにほいを
吸い込んでお昼寝したいな
それが母さんの夢だよ。
母さんより
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「まつらひ」 | 2019年3月15日 |
「まつらひ」は
古くから伝承される祭をテーマにした
六編の短編小説です。
「龍神まつり」が近づくと怪しい夢をみる
山あいのレタス農家に嫁いだ主人公の
「夜明け前」は夢おちと思っていたのに
二段仕掛けの妖艶な結末でした。
「分かつまで」は福島の「相馬野馬追」の
馬のことが書かれていて泣けてなけて
しかたありませんでした。
あの頃、原発事故のNEWSで
動物達が右往左往する姿に胸が痛みました。
「人間だって、自分の命ひとつ
落とさないように抱えているだけで精一杯で(略)」
瓦礫の間にはさまれて動けないまま、
食べるものもなく汚泥の中にいたという馬が
自分を置き去りにした人間たちを
拒んでいたのだけど、やがて人間を赦し
信頼が快復したという物語に感動しました。
浅草寺の「ほうずき市」のあかぬけた感じ
福岡柳川の「白秋祭」は幻想的で
岩手黒石の「蘇民祭」は
冬の寒さに凍える思いになりました。
それぞれ祭りの風情、街のおもむき
季節の移ろいの描写が好きでした。
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「猫のためいき鵜の寝言十七音の内と外」 | 2019年3月11日 |
「猫のためいき鵜の寝言十七音の内と外」は
テーマごとにエッセイと俳句が綴られいます。
まず第一章、集団就職をする子供の章で
泣けるのです。
12歳とか15歳くらいで親元を離れ
自立しなきゃならなかったって
親もどんなにか辛かったろうと涙が出ました。
昔の人は大人になるのが早かったことでしょうね。
著者の正木ゆう子さんは毎年、
長野まで鷹の渡りを見に行くのだそうで
旦那さんから「去年も見たのに」と言われた時の
昨日ビールを飲んだら、今日は飲まなくていいのか。
という返しに吹き出しました。
桜も毎年観に行きますものね(*^▽^*)
正木さんは日本酒が好きで
ふだんはペンより重いものは持てない私が、
一升瓶だけは片手で持てるのが不思議である。
あははあはは!
わかるわかる!
そして、猫好きさんでもあって
この世に猫を抱いて眠るほど気持ちのよいことはない。
まったく同感です。
愛猫ちゃんをお布団の中で
抱っこして眠ったこと今も良き思い出です。
言葉も綺麗で心が穏やかになれる一冊でした。
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「かけらのかたち」 | 2019年3月4日 |
深沢潮さんの「かけらのかたち」は
タイプの違う女性たちの連作短編で
自己承認欲求の闇を鮮やかにえがいています。
母親がSNSに公開している望む生き方に
窮屈さを感じながらよせてゆこうとする娘の安奈や、
妻が幸せな家庭を書いている体で
人から羨まれるような「自身の理想の家庭」を
BLOGに綴る夫などSNSに翻弄されている
人達が各章の主人公です。
六つのお話の中の「ミ・キュイ」に出てくる
杉坂さんという60歳くらいの女性の
「女としての始末の付け方」について語る
源氏物語の読書会のお話は素敵でした。
最終章で
「人からどう見られたいかでなく、自分がどうありたいか」
安奈の気づきにホッとしました。
深沢潮さんは「かっぱーん」を読んだことがありますが
現実にありそうなゆえに背筋が凍るくらい怖い話でした。
マウティングは自分のまわりには
実生活でもないです、たぶん。
私もインスタグラムなどしていますが
SNSで卒業新郎新婦様の暮らしや
お子様の成長を知ったり
よそのお家の猫ちゃんみたり
花の便りを知ったりと穏やかなことです。
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「珠玉」 | 2019年2月26日 |
以前、彩瀬まるさんの
「眠れない夜は体を脱いで」
「桜の下で待っている」などを読み
好きな文体だと感じる作家さんだったので
図書館に「珠玉」を予約して楽しみにしていました。
ですが、最初のほうは小間切れに
語り手が前ぶれなく変わるので
「え?だれ?目線?」
と、見失う感じになって
読みにくく、少し戻って読み返すと
「ああ、なるほど」でした。
黒蝶真珠目線なんて考えもしなかったのです。
祖母が美貌の偉大な歌姫であることが
プレッシャーで自身の外見や才能に
コンプレックスを抱く女性が主人公です。
読んでて、昭和のスターの祖母の
設定に山口百恵さん、中森明菜さんがよぎりました。
読後、参考文献を見て納得でした。
本物と偽物の違いについてお話は展開します。
樹脂パールが黒蝶真珠に話す言葉
それ自体の価値は大したことなくても、
自分の味方だって強く思えるものが
鞄に入ってるだけで、ずいぶん頑張れたって。
偽物であっても本物であっても、
その人の価値観次第で珠玉になるということでしょうか。
誰もが大事な「珠玉」を
持っているはずと教えられるお話でした。
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「おとぎカンパニー」 | 2019年2月21日 |
田丸雅智さんの「おとぎカンパニー」は
グリム童話やアンデルセン童話などを
素材にしたブラックファンタジーです。
「マッチ売りの少女」のパロディの
「夕陽売りの少女」のノスタルジック感が好きでした。
夕陽のように見えるだけじゃないの。
人の中にある、夕陽の思い出にも火をともせるものなの
読みながら、幼い頃に
そろばん塾の帰りに坂の上からみた夕陽や
近所の小路からするお出汁の匂いまで蘇りました。
現代を舞台に風刺やホラーもあったけど
田丸雅智さんが描くとほわりとあたたかいのです。
勧善懲悪で誠実であることの大切さを
教えてくれるものもあります。
まだまだ寒い日はあるけど暖まれる一冊でした。
2019年2月21日 カテゴリー: 気まま図書館 | コメントはまだありません »