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「生のみ生のままで」
2019年8月23日

綿矢りささんの「生のみ生のままで」は
一人の女性が一人の女性に
雷に打たれるように一目惚れするとこから始まります。



若さと勢いのある激しい恋を描いた上巻から一転、
七年を経て病の恋人に再会した下巻では
崇高な愛が描がかれています。
献身的に尽くす姿に胸を打たれ泣きながら読みました。

 

親御さんの「苦労する道を選んで欲しくない」
という親心も理解できます。
公にすると生きにくい関係であろうと察します。

 

ラストではちょいとはしゃぎすぎている二人に
「こらー!そんなことしゃだめだよぉー」って
声をかけたい気分にもなりました。

 

「どんな場所も、あなたといれば日向だ」
なんて素敵な言葉なのでしょう。
病める時も健やかな時も、
二人がずっと一緒にいられますように。

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「いるいないみらい」
2019年8月19日

窪美澄さんの「いるいないみらい」は
子供が嫌い、子供が欲しい、子供を失った
それぞれの事情で真剣に悩む人達が
五つの短編の主人公です。



 

「小さな花が集まって強い香りを放つ金木犀」
「ほおずきの実を鳴らす音」
映像、香り季節を感じながら読み進みました。

 

「小麦粉とバターとクリームの混ざったようなにおい」
のくだりでは生まれ育った家の
近くのパン屋さんの横の道を歩いた
私自身の子供の頃のことを思い出しました。

 

物語の主人公の子ども時代の
複雑な環境で育ったエピソードが切なく涙しました。
「選ばれなかった子供」でも、
良い出会いがあって前向きに生きていけるのです。

 

子どものいる未来、子どものいない未来
センシティブなテーマでありながら
深刻にならず温かい気持ちで読み終えました。
「トリニティ」に続きオススメです。

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「アンバランス」
2019年8月14日

加藤千恵さんの「アンバランス」は
冒頭からすでに怖いのです。



今まで読んだ加藤さんの小説は
青春にあるようなふんわりした題材が
多かったのですが、今作は
夫の不倫相手が乗り込んでくるという
キョウレツな始まり方でした。

 

信頼関係もあってある意味バランスの
とれた夫婦は互いに思いやっている。
けれども、本当のこと、一番大切なこと
伝えたいことが言えていなかった。

 

意識的に蓋をしていた感情が
どんどん広がってゆきそれを
押しつぶしてなくしたいのだけれど
うまくいかずさらに広がり不安になる
そんな、心理描写が繊細なことでした。

 

夫婦だから何も言わずとも
相手の思っていることがわかる
なんてことはあるはずもないのだから
ちゃんと伝えなきゃねと思いました。

 

結末はみなさんのご想像におまかせ的な
終わり方でしたが私は勝手に希望の
持てる未来を思い描きました。

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「百の夜は跳ねて」
2019年8月9日

古市憲寿さんの「百の夜は跳ねて」は
あんがい読みやすい作品でした。



主人公の語りの途中で挟まれる謎の声が
段落が変わることも、「」で囲まれることさえもなく
とにかくいきなり思考に入ってくるのだけど
不思議とスムーズに受けいれることができるのです。

 

老婆との不思議な出会いがあって
自身を落伍者だと思っていた
青年が老婆を喜ばせたい一心で
いきいきとしてくる感じが好きでした。

 

アンデルセンの「雪の女王」のごとく
格差社会の中で自棄になっていた
青年があたたかい心を取り戻してゆく
希望の持てる終わり方でした。

 

描写が細かく
考えたこともなかったけれど
そういうことあるかもね
と、腑に落ちることたびたびでした。
やはりテレビで観る通り古一さんって
おもろい人のようです。

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「もみじの言いぶん」
2019年8月5日

「もみじの言いぶん」は村山由佳さんの愛猫
もみじの視点でかかれたフォトエッセイです。



もみじのツンデレ感がなんとも可愛いいのです。
村山さんがしばらく留守にして帰ると
無視をするわけです、もみじちゃんは。
「思い知ったらええのや。うちが、どんだけ怒っとるか。」
本当、猫ってこういうとこあるよなーって
甘えっ子で生意気で自分が一番偉いんだって威張っている。

 

関西弁イントネーションのお話を
ネコメンタリーのナレーション声へと
脳内変化させて読み進むとさらなる臨場感です。

 

猫が亡くなった時、棺に湯たんぽのカバーを
入れたっていう村山さんの親心にポロポロ泣けました。。。

 

もみじちゃんの着替え(生まれかわり)を
待っている村山さん、こんなに愛されて
なんてもみちゃん幸せな猫なのでしょう!
関西弁の語り口がユーモラスで楽しいことでした。

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「旅ドロップ」
2019年7月30日

江國さんの「旅ドロップ」はドロップス缶のごとく
色とりどりの旅の思い出が詰まっていました。



旅先の空気が気持ち良かったから
土に馴染む履きものとして買った下駄を
今も新聞を取りに行く時とかつっかけていて
旅の楽しさが日常にも繋がっている感じがいいですね。

 

ナッシュヴィルのアイスクリーム店の章は
涙がにじむくらい優しさを感じました。
アイスクリームのフレーバーを「初めて」と
言ったことを誤解されるに始まり大丈夫よと
親子くらい年の若い女の子になぐさめられる
そんな、旅先の人とのふれあいはあたたかくて。
このアイス屋さんは、先日読んだばかりの
「彼女たちの場合は」に出てきました。

 

行ったことある場所や同じような経験が
登場した時も楽しいものです。
和歌山のアドベンチャーランドでは、
赤ちゃんのパンダの前を幾度も行きましたし
パンダ舎のバックヤードツアーにも参加したもんね♫•*¨*•.¸¸♪✧

 

どんなに楽しい旅でも家に帰ると
家があって良かったとほっとするという章では
帰る場所があって無事に旅ができたことに
感謝する感じは共鳴できます。
そんな気持ちになれることはとても幸せなことで
なんなら、そのために旅をするような
うん、そう、そうです。

 

学生時代に女友達と帰る日も泊まる場所も
決めずにお金が続く限りアフリカまで行こうとした旅で
一緒に感動したり互いに勇気付けられたり
こういう様々な経験が積もって
江國さんの小説が出来あがるんだなって
今まで読んだ作品を思い出すのも楽しいことでした。

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「しゃぼん玉」
2019年7月26日

乃南アサさんの「しゃぼん玉」は帰る家も
頼る家族も仕事も友人もなく恋さえもしたことがない
絶望感のみで生きている青年が主人公です。



我が身を「何一つ持たず、ただ漂って
生きているだけの、やがてパチンと
消えてしまうしゃぼん玉」と感じており

「着地したら消えてしまう」
「人とかかわると消えてしまう」と
逃げることしか考えていない青年が
その日に帰る場所と洗濯された衣類、
上等ではないけど何だか心地いい寝具、
そして、自分を頼ってくれる人、
笑顔になって欲しいと願う人との出会い、
心のこもった食事をとることで
徐々に変わってゆきます。

 

田舎の情景描写も美しいことでした。
ことさら、水の音が臨場感を持って描かれていて
青年の荒んだ心にあたたかいものをもたらします。
例えば、田舎の家の雨音に耳を澄ませて
そのうち、雨音を楽しい嬉しい愉快と感じ
自分の中にこんな感情があったのだと驚く。
そんなことを考えながら眠りについた日は
きっといい夢がみられるんだろうなぁなんて
読み手も幸せなキブンになれます(*^▽^*)。

 

想像通りの展開でしたが、エピローグでは泣きました。
人は、誰かに愛されている、
誰かに必要とされているという思いで
希望を持って生きられるというメッセージをうけとりました。
方言があるからこその人物の個性を
想像できて読みやすかったです。

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「ふたたび蝉の声」
2019年7月23日

内村光良さんの「ふたたび蝉の声」は
何気ない日常や思い出の振り返りのような小説でした。



過去と現在を行ったり来たり
そこに、親が老いていく時の寂しさや
家族の病のことなども描かれています。

 

臨場感がすごくあってウッチャンって
いったいどんだけ数多くの経験してるんだろか?
と、感じました。
もちろん、小説がすべて作家自身の
実体験などとは思ってはいないけれどね。

 

ウッチャン本人が

知り合いの誰かと誰かを足して創った人物もいれば、
まったくの想像で創った人物もいたり……。

と語っていました。

 

舞台俳優の進をとりまく人々が
オムニバス形式で主役になり
場面が次々入れ替わります。
終盤、大泣きした章があって
(ネタバレになっては
いけないのでかけませんが)
ああ、理想の来し方行く末だなぁって思えました。
素朴な文章が読みやすかったです。

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「ひと」
2019年7月19日

「ひと」は短いセンテンスで読みやすく
大泣きはしなけれどウルウルしながら
あっという間にスイスイっと読めました。



健気で人が良過ぎて譲ってばかりの
主人公に「そんな無防備な」とハラハラしたり
いいことがあるとそろそろ嫌なことが
起こるんじゃないかとヒヤヒヤしたり
これ以上に辛いこと酷い目にあったら読めないな
なんて立ちどまることも度々あって。
けれど、目次が
一人の秋、一人の冬、一人の春、夏
なので、一人じゃなくなる、きっと
と、信じ安心して最後まで読めました。

 

悪いヤツ、嫌なヤツも出てくるけれど
イイ人が当たり前に淡々と現れる感じがいいです。
ホッとしたのは猫が苦手だった主人公が
猫をなでた描写でした。

 

ご縁が大事

「人材に代わりはいても人に代わりはいない」

ぴったりのひとに出逢うべくして出逢えると信じています。
ハートウォミング系やっぱいいですね。
初読みの作家さん小野寺史宜さんの
小説は爽やかな読後感でした。

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「思わず考えちゃう」
2019年7月16日

絵本作家ヨシタケシンスケさんの
「思わず考えちゃう」は、ほのぼのとした
あるあるがいっぱいなのです。



中でも子育ての章の共感が心地よしでした。
「川遊びでぬれちゃって裸でシートベルト」
と、いうくだりに大笑い!
で!思い出した!
我が家でも裸にランドセルあったあった!
川遊びして全身ずぶぬれの坊主が
半ズボンは履いていたけれど右手にずぶ濡れTシャツ
ランドセルを半裸の上にしょっていたっけ。
あのランドセル姿は今も鮮明に覚えています。
「裸の大将?山下画伯か??」って思ったものね。

 

『今しかないのにもったいない』は
身に沁みる言葉です。
最近、よく思うのです。
あんなに可愛くておもしろかった幼い頃を
なぜもっと大切にできなかったのだろう
いっぱい楽しめなかったのだろう
余裕なかったなぁっと・・・・・
が、エッセイ読みながら
あ!そういう後悔は自分だけじゃないんだと思えて。
あと、我が子の幼い頃のことを宝物のように
度々、思い出している感じもです。
そんな安心感が心地よしの章でした(*^▽^*)

 

ゆるいイラストも楽しいエッセイは
どこからでもお気楽に読んで良いので
忙しい時の脳味噌リフレッシュにむいている一冊です。
あ、ウチの坊主も
お、おにぎりが好きなんだなぁ(*^▽^*)

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