「世話を焼かない四人の女」 | 2019年10月11日 |
麻宮ゆり子さんの「世話を焼かない四人の女」は
自分を強く持っている個性的な女性達が
元気に活躍するお仕事小説でした。
第一章では猫ちゃんがいなくなって
車にひかれていないか
いじめらていないか
ヘンなもの食べていないか
寒くないか、などなど一緒に心配しました。
この作家さん、初読みでしたが
描写が新鮮なのです。
例えば、日和さんがドイツパンを作るシーンでは
機械から取り出したパン生地を
「ぐにゃりと気を失った美少年のようだ」と言い
生地を寝かせた後は
「生気と艶を増していく」とまるでパン生地を
尊ぶべき命があるように描かれています。
空気の読めない斎木くんが全編に登場しますが
必ず水玉アイテムを一点身につけていて
水玉を好きな理由が
「命を表す水のしずく」であって
「規則正しい、幸福の象徴」と言います。
そして、疲れないか?ってくらい
自分自身の決め事をいくつもキチンと毎日守っているのです。
斎木くんに限らず適材適所、
それぞれの個性が理解され
発揮できる場所があったらとても
素敵な社会になるのだろうと感じました。
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「平凡」 | 2019年10月4日 |
無数の選択から成り立っている人生。
大なり小なり「たられば」を思うことがあると思うのです。
角田光代さんの「平凡」は、もしあの時
別の道を選んでいたらというお話でした。
表題作の「平凡」では、ずっと昔に
理不尽な別れたかたをした男性の人生を
「ど平凡であれと呪い続けた」と言う女性。
なんと強烈な!
が、それは「波乱万丈なんかじゃなく
平凡に生きていてほしい」と願いに近い
感情だったというのです。
別れた男性の今の暮らしが穏やかで
あって欲しいと知らず知らず願う女性にうるっときました。
むっつの短編集には、妬み、僻み、
恨み、嫉み、見栄、未練と人間味ある感情が
鮮やかに描かれているのですが
重たくもドロドロもしていなくて、
やっぱり今生きている時間が現実なのだ
と、読後感は清々しいものでした。
自分がこの選択をして正解だったと
他の誰かの評価じゃなくって
自分自身で思えたらと素晴らしい人生
だったと言うことですかね( •ॢ◡-ॢ)-♡。
表紙のデザインが牛乳石鹸の青箱の
猫ちゃん、決して平凡ではないですね。
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「夏の騎士」 | 2019年9月30日 |
百田尚樹さん「夏の騎士」は、
共感できるエピソードもいっぱいの
ノスタルジー小説でした。
昭和時代の六年生のひと夏の冒険&
成長が描かれています。
小学生の男の子ってみんな
秘密基地を作りたがるのかな。
我が家の坊主も仲良し三人組で
基地づくりしてましたっけ。
友情と恋心のチカラは偉大で
力を合わせて困難を乗り越えていく
姿は清々しいことでした。
気付きで人は成長する
自己啓発本のように心にとめておきたい
言葉がいくつもありました。
夏の名残りのよな暑い日に読めて良かった。
セミの啼き声でなく鈴虫の音の
季節ではありましたが。
読後感は爽やかさ残る瑞々しい青春物語でした。
子供だけに見えた世界あったんだろうな。
いいお友達に出会えて良かったね。
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「虹にすわる」 | 2019年9月27日 |
瀧羽麻子さんの「虹にすわる」は
夕飯後に読み始めスラスラっと一気に読みました。
慎重すぎる真面目な主人公と
感性というかノリで生きている後輩
二人のコンビネーションがつくりだす
日々は、ほほえましくもありました。
物づくりが好きな二人が
「座る人にぴったりの椅子」を
作りあげてゆく様子が金澤syugenが
ウェディングを創作する姿勢と
似ているとこがあると感じました。
モノづくりをする人のお話しが好きです。
心地いいオーダーメイドの椅子を
作り続けたという二人の夢が叶いますように☆”
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「空から森が降ってくる」 | 2019年9月23日 |
森の中の家で創作を続けている
小手鞠るいさんの「空から森が降ってくる」は
時々おとぎ話のような愛らしさを感じられるエッセイでした。
森にはなんと多くの物語が秘められているのだろう。
花が咲く感動
野生の生き物の愛らしさ
深い樹木の香り
さまざまな雪の色
季節を迎える感動と草花や動物との再会の喜び
停電や豪雪、猛暑、容赦ない動物の命の連鎖。
自然の非常や過酷さを受け入れて
逞しくもしなやかに暮らす日々が綴られています。
庭に植えた薔薇や睡蓮を鹿に食べられて
悔しがるのだけど野生の鹿が庭に
来てくれることを喜んでいたり
家のそばの池に来る熊の成長を
見守っていたりするのです。
小熊を連れて来たり恋人同士でじゃれあう様子が
熊もユーモラスで可愛い仲間のようです。
時々、ウルウルっとくるページもあって
あ、愛猫の思い出話はボロ泣きです。
「生き物の死体を見つけたら葉っぱで
包んで森まで運ぶ」そうです。
森で生まれ育った魂は
「森に還ってこそ成仏できる」というのです。
自然の優しさや懐の深さを感じ
心あらわれるエッセイでした。
追記
オレンジのかぼちゃはpumpkin
で、深緑のかぼちゃはkabochaなのだそう!
日本語が英単語になっていてびっくり☆”
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「ムスメからおとうさんへ。」 | 2019年9月17日 |
なかがわみどりさんとムラマツエリコさんの
「ムスメからおとうさんへ。」はイラストも
ほっこり愛らしいことです。
第一章では顔が水浸しになりました。
読みながら、思いだしたのは幼い頃、
夜中に熱を出した私を抱いて
小児科へと父と母が走っている光景です。
朦朧とした意識の中だったろうけど
鮮明に覚えています。
友達が家に来て父に会うと
「お父さんかっこいい」「お父さんきれいな顔してる」
って言われたこと、鼻高々だったなぁ♪
(私は、残念なことにちっとも父に似てやしない)
思春期は反抗しっぱなしでごめんなさい。
今、金澤syugenの新郎新婦様達と
お話ししていて素敵だなぁと感じるのは
親御様に感謝の思いをしっかり持っていて
素直に表現されているということです。
それぞれにカタチは違うのだけど
新郎新婦様達の思いをうかがうと
すごくあたたかで清らかな気持ちになれます。
一番最後に父と旅をしたのは、
紅葉の白川郷でした。
お蕎麦食べたね、
とちの実煎餅も
紅葉がきれいだったね。
永眠した日も、町に紅葉が降りてきた頃でした。
一番好きな季節を選んで旅だったんだと思えます。
父の思い出をあれこれ再生したくなる一冊でした。
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「かわいい見聞録」 | 2019年9月13日 |
益田ミリさん「かわいい見聞録」は
かわいいものへの愛が満ち溢れていました。
「駅弁のお茶のかわいさ」の章で
幸せな時間の象徴としてポリ容器のお茶が登場。
覚えていますとも!
小学生の頃、絵の具の筆を洗うのに
持ってくる子がいました。
新しめの容器だと「どっか旅行してきたんだな」と
なんだかまばゆく見えたものでした。
「コンペイトウのかわいい演出」の章では
お茶のお稽古の時間、瓢箪っぽい形の
振出(菓子器)をまわす時の
『何色が出てくるのかしらん』と
ワクワクした感じを思い出しました。
買って食べるというより、もらって「わっ、かわいい」と喜ぶお菓子。
わかります!金澤syugenの引き出物でも
金箔の金平糖は人気商品です( •ॢ◡-ॢ)-♡
イラストもシュール感と文章のリズムも楽しく
時々は懐かしさもこみあげるエッセイでした。
最後に作者の撮ったかわいいものたちの
写真の中に金沢の金花糖もあって嬉しかったです。
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「鎌倉うずまき案内所」 | 2019年9月9日 |
青山美智子さんの「鎌倉うずまき案内所」は
まずは鮮やかな藍色の表紙&裏表紙の
デザインでキュンときます。
令和から六年ごとに遡って昭和の
終わりまで六つの短編集が繋がっています。
その当時の流行りものが背景として
書かれていて「あったあった^^」や
懐かしいがいっぱいありました。
スケルトンのMACはウチにもありました。
その頃は、めちゃくちゃおしゃれなの
持ってんだなぁアタシと悦に入ってたっけ。
会社を辞めたくて悶々とする編集者、
思春期の息子を案ずる母親、
この人でいいのかな?と、結婚を迷う女性、
学校での人間関係に苦しむ女の子、
咲かない実りがないと悩む劇作家、
来しかたはこれで良かったのかと問う本屋の店主、
すべての章の主人公にどこか共感できて
中でも「つむじの巻」は泣けました。
私が夢にまでみた光景が描かれているのです。
我が子の小さい頃のことを思い出しては
もう一度抱っこしたいってよく思うのです。
脇の下に手を入れてフワリと持ち上げられた
あの頃、可愛かったなぁ♫•*¨*•.¸¸♪✧
夢でもいいからもう一度
抱きしめたいなぁ
いつまでも小さくて可愛い坊主であるはずはなく
成長は当たり前のことなんだけどね。
もう一度、あのふわふわなほっぺだったり
柔らかい髪のにおいをかぐことができたら
どんなに幸せなことだろうと妄想していました。
なつかしいって感情は、年長者への
ご褒美みたいなものだよね。
時がたてばたつほど、美味しくなる。
これ名言だと思いました。
人生にはぐれた感のある登場人物に
少しの奇跡がおきて気付きをもたらせてくれる。
優しい気持ちになれる良き小説でした。
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「五つ星をつけてよ」 | 2019年9月2日 |
奥田亜希子さんの「五つ星をつけてよ」は
ネット社会をからめた短編が六つです。
様々な登場人物それぞれに全幅で
共感できるということはないけど
日常のあるあるだったり
ズレを理解することが出来ました。
「キャンディ・イン・ポケット」は
思春期のほろ苦さの中の
ほのかな甘さが表現されていて
結末では、ふわっと優しい気分になれました。
「ジャムの果て」では、過干渉気味の母親を
疎ましく思う成人した子供達と
かわらぬ愛情ゆえの苦悩と孤独感の母親、
どっちもわかるわかるです。
子供はいつまでも子供じゃなくて
成長しているってことなんですよね。
結末は、ホラーでした。
「ウオーター・アンダー・ザ・ブリッジ」は
大人を信用できない中学生が大人になった時
過去の経験が蘇って来ます。
女の子が成長してゆく時の心情がよく表れていて
時々は若さゆえの残酷さというものを感じて
自分自身が通った道を思い出しヒリヒリしました。
私もインスタグラムだったり
こうやってブログもかいていますが
暗い言葉は文字にはしないってこと決めています( •ॢ◡-ॢ)-♡。
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「緋の河」 | 2019年8月28日 |
桜木紫乃さんの「緋の河」読了
やっぱ桜木作品好きだなぁって思えました。
幼少時から男である自身の性に違和感をもち
やがてゲイボーイとして生きていく主人公。
普通じゃないと感じるものを残酷に
排除しようとした時代に生きぬいた
その苦労は辛らつなものだったと思います。
女っぽくしなをつくっている体の小さい
主人公が啖呵を切るシーンでは
男言葉になってドスの利いた声で怒る様を
想像してスカッとした気分になりました。
母親の細って柔らかくなった白髪を
染めてあげるシーンに大いに泣けました。
それは、母さんのほうの気持ちにもなれるから。
「自分の生んだ子がどんな姿でも、誰かを幸せにしているのならそれでいいよ。」
母親の言葉にジーンします。
家族からさえも愛する息子を蔑まれることがあって
想像もできないほどの苦労が続いたわけで。
姉との里帰りで母親に記憶に深く残る
幸せな思い出を作ってあげられて
良かったって心から思えました。
物語は終始、優しい母さんと姉上の存在にホッとできます。
ラストシーン、沈む太陽をみて
赤く、朱く、紅く、より緋くー
小説には赤い紅、赤いヒール、
赤いスカート、真っ赤な薔薇
と、赤が印象的に射し込まれまれていました。
桜木さんの繊細な描写は
我が心にとどめて置きたい言葉が多く
引き返して二度読みするこも度々でした。
530ページ退屈することなく読み終えました。
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