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「ミカエルの鼓動」
2021年12月24日

柚月裕子さんの「ミカエルの鼓動」は病院内の
権力闘争、隠蔽体質、そして医師のプライドが
絡み合う医療サスペンスです。



会話にリアル感がないなぁと読み始めるも
後半は手術の様子の描写が細やかで
すごい取材されたことがうかがえ集中して読み進めました。

 

貧困ゆえの医療格差に直面し早くして
両親を亡くしている主人公は人命救助を
第一に考える有能な医師です。

 

医療は信仰で「医師は神であり、患者は信者」と
言う病院長に主人公が「医師と患者は平等だ」
「医師は患者を救いたいと思い、患者は医師を
信頼する。両者の心が向き合ったさきに、
本当の救いがある」と語るシーンは感動しました。

 

ここ25年くらいで急激にインフォームドコンセントや
セカンドオピニオンという体制がすすんだと思うのです。
患者が病院側に気を遣うことを求められなくなり
高圧的な医師も格段に減ったと感じています。

 

未来はあたたみのある医療が平等に
受けられる世の中であって欲しいと願います。

 

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金澤syugenはオーダーメイドの少人数の結婚式、
生家ご出立、挙式、フォト婚のサポートもいたします。
衣装コーディネート、オリジナルアイテムのデザイン、
和婚式の会場紹介などポイントサポートもご相談ください。
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「さよならも言えないうちに」
2021年12月20日

川口俊和さんの「さよならも言えないうちに」は
「コーヒーが冷めないうちに」のシリーズの第四作です。



脳死状態や死別といった妻・恋人・愛犬、父親
そんな愛する人との時間をやり直す四話です。
愛犬への思いの章ではゴールデンレトリーバーは
賢いからこんなこともありそうと泣けました。
父親との話は自身の体験とかぶるものがあり爆泣き。
思春期を思い起こしなんであんなこと・・・・・
と、後悔しきり。。。
あの頃の自分をぶんなぐりにいきたい・・・・・。

 

過去は絶対に変えられないけれど
後悔を持って悲しい気持ちで
過ごしていた人達が時間をさかのぼって
真実を知ったり
感謝や正直な気持ちを伝えられたことで
前を向いて歩いていけるようになる明るさが好きでした。

 

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「おはようおかえり」
2021年12月17日

近藤史恵さんの「おはようおかえり」は
曾祖母が主人公の妹に乗り移るという
ファンタジーな家族小説でした。



タイトルは「おはよう」と「おかえり」と思っていたら
「お早うお帰り」(いってらっしゃい)でした。
脳内で話し言葉を関西イントネーションにして読み進めます。
大阪の老舗の和菓子屋さんが舞台で
きんつばやら七宝焼やらを作る工程を
読むと無性に和菓子が食べたくなりました。

 

曾祖母の手紙を探すミステリアスな雰囲気もあります。
明治の頃「家の為、夫の為、子の為」に生きた
曾祖母の価値観を知ったことで姉妹が
自分たちの将来についてあらためて考えます。
姉妹の成長の様子にあたたかくなれるお話でした。
曾祖母様の明治の女の心意気かっこいいい!

 

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「青空と逃げる」
2021年12月14日

スキャンダルに巻き込まれた父親が
誰にも真実を知らせねままに失踪。
残された母親と子を悪意あるマスコミや
関係者が容赦なく追ってきます。
辻村深月さんの「青空と逃げる」は逃げ続ける
母と子それぞれの視点から物語が描かれています。



互いが秘密を抱える母と子。
境遇が変わる中で母親を気遣う子どもの姿に
我が子の成長を感じる母
子どもは今まで見ていなかった母の様々な面を知ります。

 

先々で出会う人たちの優しさとふれあいの
シーンにはほのぼのしたものがあります。
母親が歌をうたうシーンと
人形の修理をするシーンでは泣けました。
誰かに必要とされるって力になるね。

 

子を守らねばと強くなる母。
そして、母親は実は自分が子を守っていたんじゃ
無くって子に守られていたんだって気づきます。
サスペンスとあたたかい人間ドラマがありました。

 

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「らんたん」
2021年12月10日

柚木麻子さんの「らんたん」はお札のあの人も
朝の連ドラのあの人も大河のあの人も登場します。



女性の教育の権利と地位の向上のために
努力し次の時代へと繋げた女性達。
その視線の先には、すべての人々に
平等な社会と世界平和という大きな志がありました。

 

明治、大正、昭和とちょっとづつちょっとづつ
女性の地位が向上してゆくのだけど
世界大戦で大きく後退します。
物語には戦争のむごさや恐怖も描かれています。

 

ここ20年30年は女性の生きやすさは
飛躍的にアップしました。
この本を読んで多くの人のご努力があって
今の自由があることを感じたのでした。

 

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「闇祓」
2021年12月7日

辻村深月さん作品は今までもあの世と
この世の行き来だったり時空を超えたりの
ファンタジー小説はあったのだけど
「闇祓」はダークファンタジーでなにせ怖い、震えます。



ホラーは嫌いだと思いつつ先が気になり
早く抜け出したくってすごい勢いで
一気読みしてしまいました。

 

団地のマウンティングや学校のスクール
カーストはみな嫌な思いをした経験が
あるのではないでしょうか。
さらに、現代はSNSで簡単に人と繋がり
知らずに追いかけられてしまう、そんな
時代の在りようが上手く取り入れられていて
登場人物と一緒に追い詰められリアルな恐怖が迫ってきます。
小さな違和感が気付いたら、支配や洗脳といった
まともじゃない状況になっている様が本当に不気味です。

 

誰もが持っている闇の感情が
とても巧みに描かれていて
こんな人いると感じたり
いつかの記憶が蘇ってきたり
あと、自分も闇ハラしてたのではないかと考えたりでした。

 

竹を身につけていたら守られるとあって
金澤syugenは近所に大きな竹藪あるから
きっと、守られているわと安心したりもしました。

 

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「赤と青とのエスキース」
2021年12月3日

青山美智子さん作品は数年前に図書館で
表紙の猫に惹かれ偶然、手にとってから
ファンタジー感が好きでずっと追い続けています。
今回の「赤と青とのエスキース」の表紙には
白猫ちゃんが描かれています。



一つの絵画「エスキース」が旅する物語です。
第一章の絵画の誕生
第二章の絵画の結婚(絵が相性の良い額縁に
出会うことを絵と縁の結婚というのだそう)
そして絵画は時代を越えて海を越えて
様々な人々に優しいぬくもりを贈ります。

 

第三章では、かっての弟子の成功を
祝福しながら悔しさも不甲斐なさも
胸の内にあるマンガ家の葛藤があります。
ラストにマンガ家と弟子のお人柄にポロポロ泣けました。
恋愛だけではなく色んな愛が描かれています。

 

第四章に出てくる童話「泣いた赤鬼」は
私が読書で初めて涙したお話です。
赤鬼と青鬼の友情の物語なのだけど
子供心に鬼の純粋さゆえの不器用さと
その結末にとてつもない寂しさを感じ
切なくって悲しくって泣きました。

 

プロローグですべての出会いに意味があり
離れてしまっても心はそばにいたのだと感じられます。
歳月を経て熟成された愛の長い歴史が
チャクンっと静かに繋がって心地よかったです。

 

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「遠慮深いうたた寝」
2021年11月30日

小川洋子さんの「遠慮深いうたた寝」の
装幀には陶磁器のような涼やかさがあります。



時に哲学的に時に叙情的に美しい言葉で
紡がれていて情景を膨らますことがきました。
例えば店じまいする近所の本屋さんにいて
ふいに昔のことを思い出すのです。
入院している息子さんに頼まれた雑誌が
そこにあった時、息子さんの無事が約束された
キモチになったことがあったと。

 

わかるわかるも多々ありです。
「不意に心の中で音楽が聞こえる」
特別に好きな歌でもなく思いもよらないものだそう。
私も外出の支度をしているといきなり
好きでもない往年のアイドルの歌とか出てきて
それは特徴的なとこしか覚えていないから
同じフレーズが脳内でずっとリフレインされます。
普段、聞くわけでもないたいがい懐メロというカテゴリーの歌です。

 

我が子に寝る前に絵本を読み
怖がっても不安になっても
ここに母親がいることで安心して
闇に行ける(眠りにつく)ことが大切ってのもよくわかります。
童話って案外と泣けるお話が多く
「クリスマスキャロル」は何度読んだって泣きました。
そして何度も幸せな気持ちになりました。

 

おちょこちょいさんなエピソードに何度も笑い
ピュアでユーモラスなお人柄がうかがい知れて
心がホカホカあたたまるエッセイでした。

 

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「倒産続きの彼女」
2021年11月27日

新川帆立さんの「倒産続きの彼女」は
企業法務を扱う軽いタッチの弁護士ものです。



株式会社の仕組、企業の倒産の謎、
吸収合併のカラクリ、企業の陰でうごめく
機関投資グループの狡猾さや
非正規雇用に不満を持つ層の姿も描かれています。

 

「元彼の遺言状」の続編で今回は剣持麗子が
サブキャラとなって登場します。
主人公の美馬玉子は育った環境が全く違い
恵まれている麗子を羨み苦手意識を
持っているのだけど成長とともにだんだんと
彼女に惹かれていく感じが良かったです。
勝手な要素で区別し優劣を決めるや
誰かが都合良く序列を作っているという指摘にもハッとしました。

 

読み始めは主人公に全く共感できなかったのが
読んでいくとだんだんと楽しくって応援したくなるお話でした。

 

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「果ての海」
2021年11月24日

花房観音さんの「果ての海」は
福井のにび色の空や、深く重たい雪、
激しい日本海の荒波、そんな情景が主人公の
生き様と絶妙にリンクしています。



愛人男性を殺害し名を変え顔を変えた
主人公は一人娘の身を案じつつも
逃亡しあわら温泉の旅館に住込みで働き
なるべく人と関わらぬように生きてゆこうとします。

 

なんでそこで流されるかなー
男性の誘惑におされがちな
惰性的な主人公に怒りつつも
逃亡を応援したい気持ちになったりでした。

 

最終章、どんでんに泣けました。
ノスタルジックでどこかもの悲しく
冬の東尋坊越前海岸の水仙など
急に寒くなった今の時期に読むと
いっそうの臨場感もあじわえるかもです。

 

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