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「人でなしの櫻」
2022年5月6日

遠田潤子さんの「人でなしの櫻」の読後感は
とにかく悪しです。



8歳の少女を誘拐させ売買し
11年間監禁し洗脳し続けた男と
父親を嫌悪し恨みながらも
その狂気を受け継ぐ男の息子。
父親が天才料理人で息子が画家です。

 

絵画の名前がいくつも出てくるのですが
知らない絵はスマホで検索したりもありました。

 

自分勝手な男達の人生の結末が
気にかかり最期を見届けてやろうと
最終ページにたどりついたという感じです。
虐待の物語に不快感でいっぱいに
なったのでイヤミス大成功って感じですね。

 

装幀の鮮やかな桜の写真は蜷川実花さんの作品だそうです。

 

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金澤syugenはオーダーメイドの少人数の結婚式、
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「二重らせんのスイッチ」
2022年5月2日

辻堂ゆめさんの「二重らせんのスイッチ」は
冤罪事件をきっかけに主人公が
恐怖と苦難の渦に陥ってゆきます。
二章と三章とさらなる不穏さが募る
ミステリーで、毒から抜け出したくて
夜更かししての一気読みでした。



残虐な描写が苦手なので読むのを
やめようかとも思いつつ家族愛や
恋人との絆にかすかに光のようなものが
感じられ読み進むことができました。
で、最後まで気が抜けないスリルを味わいました。

 

国際養子が巻き起こす悲劇。
育った環境が人格の形成に与える影響は
もちろん大きいことと思います。
ですが、生まれや環境は選べなくても
大人になってから生き方は選べる、
そうであって欲しいなぁと読み終えました。

 

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「猫はわかっている」
2022年4月28日

「猫はわかっている」は7人の作家さんによる
猫愛あふれるアンソロジーです。



村山由佳さんの「世界を取り戻す」では
猫が生涯に一度だけ人の言葉を喋るというのです。
老猫を保護して看病をしてきた主人公に
死ぬ間際「じゃあ、そろそろいくワ」と
その猫が言うのを聞いたと・・・・・。
おっかしくって笑ったのですが
いや、やっぱり、きっと、言ったんだと思う。

 

阿部智里さんの「50万の猫と7センチ」は
一匹の茶トラとこの猫に関わりを
持つようになった一家の物語でなんだか
ありそうでドキュメンタリーっぽいのです。

 

望月麻衣さんの「幸せなしもべ」では
猫が好きでなくても一緒に暮らすと
その可愛さに射抜かれメロメロになる
様子が描かれています。
猫の下僕になるのもよきかなよきかなです。

 

三日前、近所で出会ったプラチナヘアーに
白足袋姿のカワイコちゃん💓





愛想良しでミャッと小さく話しながら
ゴロンと白いお腹をみせてくれました。

 

猫って不思議な生き物でみんな
おかしいくらい魅了されます(ू•ᴗ•ू❁)。

 

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「コスメの王様」
2022年4月25日

高殿円さんの「コスメの王様」は明治から
大正昭和へと駆け抜けた実業家の利一と芸妓のハナの一代記です。



望んでいた中学進学ができず
家族のために単身神戸に出てきた利一と
牛より安い値段で妓楼に売られたハナが
互いに貧しい幼少時代に出会います。

 

芸妓と起業家とそれぞれの道を
すごい勢いでつっぱしり才能が花開き
互いにその努力と成功を認め
喜びあう姿が尊いことです。
ですが、互いに強く惹かれ憧れが
ありながらも自分とはつりあわないと
ひくとこがもどかしくもありました。

 

財界人に招かれた宴席で利一が
ハナの座敷舞に心うたれるシーンがあります。
若くして一流の料亭に登楼できるまでに
なった利一と大関芸妓に出世したハナ、
互いにどんなにか感慨深いことだったろうと涙しました。

 

神戸の街がどんどん開けてゆく様子も
描かれていてワクワクしました。
そして、その時代のいくつもの戦争の
愚かしさと人々の痛みも伝わってきて
決して繰り返してはいけないだと強く思いました。

 

ラストでは老いと衰退という切なさがありながも
緩やかな時間が訪れたことにほっとしました。

 

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「博士の長靴」
2022年4月21日

瀧羽麻子さんの「博士の長靴」は
気象学が専門の博士とその家族四世代を
描いた6つの連作短篇集です。



1958年立春から2022年立春までの
天気の話に家族の歴史、そこに様々な
時代背景が織り込まれています。
昭和から平成、令和へと時代の
変化とともに親子や夫婦の在り方も
色々と変化していくことを感じました。

 

季節ごとの旬の恵みに感謝し
二十四節気の行事を大切にする家風にも和みます。
四季を愛する日本人の心の豊かさにほっこりでした。

 

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「アルツ村」
2022年4月17日

南杏子さんの「 アルツ村 」は胸にズシンと
くること多く、時々はしんどくなったけど
先が気になっての一気読みでした。



主人公が夫のDVから逃れ幼い娘を連れ
夜中に車を走らせていて事故を起こすという
プロローグにドキドキでした。

 

認知症の人達だけが住まいする村に迷い込みます。
認知症の描写がリアルでその家族の苦悩、
中でもヤングケアラーが追い込まれていく
様子は痛々しいことでした。
認知症の人が家族から疎ましがられ虐待を受けるや
認知症の人の不安なども描かれています。

 

だんだん記憶が薄れていくことは
恐怖であろうと察します。
私自身、ヤングケアラーだった時期が
ちょこっとあります(その頃はそんな、
おしゃれな言葉なかったけどね^^)。

 

あおり運転、外国人の不法就労、
外国資本の広大な日本の土地の買収、
高齢者の運転、老々介護、新薬の研究、
などなど今日的な問題も差し込まれています。

 

ラストには予想をはるかに越える大どんでんがあります。

 

お話の中で認知症の人達がアルバムを見て
美しい写真に刺激され
それぞれに幸せだった記憶が蘇って
それはそれは楽しく思い出を話すシーンがあります。
写真で残すは大事だなぁってあらためて思いました。

 

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「彼女。」
2022年4月14日

「彼女。」はコメディ系もシリアス系も
それぞれ個性のアンソロジーの百合小説です。



女性同士のさまざまな形の関係のお話で
友人に、先輩にほのかに感じたような
憧れだったり認められたい気持ちは
好きなどの言葉では形容しがたいものがあって
女性ならみな経験があるのではないでしょうか。

 

一番好きだったのは殺人から始まる
相沢沙呼さんの「微笑の対価」で
ミステリアスな展開にゾクゾクしました。
物語はぷつっと終わったのだけど
その後、どうなったんだろうか・・・
ホントの気持ちは・・・っと、気になります。

 

織守きょうやさん「椿と悠」は女の子同士の
少し神経質な感じとか感傷的な雰囲気とかが
可愛らしいなぁと感じ
武田さん綾乃「馬鹿者の恋」は
なくして気づくことあるんだよね
拙い恋だったんだよねって甘く切ないことでした。

 

同性間の恋心あってもいいと思っています。
人が人を愛するって尊いことで
その関係も様々で良いですよね。

 

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「夏の体温」
2022年4月11日

「夏の体温」は小学3年生の男の子の友情のお話です。



長期入院の瑛介と検査入院の壮太。
瑛介の胸の内にはさまざまな葛藤があり
自身を俯瞰でみている様子もせつなくなります。

 

壮太の明るさと瑛介の心情の変化が
鮮やかに描かれています。
鬱屈とした日々を送りながらも
純粋な心で互いを思い遣る二人が
優しさにあふれていて心があたたまりました。

 

瀬尾まいこさんだから覚悟は
していたけど小児病棟の話だから
そりゃもうどうしようもなく泣けました。

 

短編がもう2つ入っていて「花曇りの向こう」は
国語の教科書に載るそうです(ू•ᴗ•ू❁)。
ボウズの小2の時の「スーホの白い馬」は
欲まみれの大人にひどいことされる
純粋な少年と愛馬が可哀想すぎて辛く泣きました。
こんな残酷にもほどある話を
いたいけな子供達に読ませていいの
かしらんと胸を痛めたものでした。
「花曇りの向こう」はシャイな少年が
友情を育てていくのどかなお話でした。

 

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「花屋さんが言うことには」
2022年4月7日

山本幸久さんの「花屋さんが言うことには」は
短編各章にて四季折々のお花がテーマに
なっているハートフルなお仕事小説です。



お花にまつわる短歌や古典や俳句に絵画、
色や本数によっても異なる花言葉など
優雅な気分でちょっとした雑学もえられます。
知らないお花の名前が出てくること度々で
スマホで画像検索したりも楽しかったです。

 

小学校の卒業文集で将来の夢は
お花屋さんとかいたのだなぁ、私。
読んでいてホント体力勝負の大変な
お仕事とあらためて感じ入り頭が下がります。
私はウェディングプロデユースという
仕事柄、装花やブーケ、生花のかんざしなどの
提案もするのでお花の存在は近くに
感じられ幸せなことです。

 

川原崎花店のさりげないアドバイスや
アイディアも素敵でお客さんたちとの
やりとりもあたたかいお話でした。

 

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「風の港」
2022年4月4日

村山早紀さんの「風の港」は春の空港を
舞台にした五つの連作短編集で心の中に
風が吹き込んで来るような爽やかさがありました。



各章の主人公の心に長くあったひっかかり。
空港で過去を振り返りながら
自然にほどけてゆく感じが好きでした。

 

戦争のむごさにもふれられている章も
あり長崎出身の作家さんなので
大切なメッセージも優しく
織り込まれていて心に響きました。

 

あとがきで「あの頃のように空を
飛べ日がきますようにと」綴っている言葉が
印象に残りました。
コロナ収束と平和を祈ります。

 

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